連載コラム「リビングに絵画を」

弊社スタッフが、「アイリスタ」に連載中のコラム「リビングに絵画を」をお届けします。版画を初歩からわかりやすく解説しています。ご参考にどうぞ。

■第十一回:フレーム&マット

美術館や画廊で絵画作品を鑑賞するとき、作品がどんな額縁にはいっているか、という点に気をつけて見たことがありますか?

パリのルーヴル美術館などに行くと、立派な名画がそれこそすごくデコラティブな額にはいって堂々と飾られているのが見られます。大きさもさまざまですが、意匠もそれぞれすごく凝っていて、隙間なく彫刻がほどこされていたり、金箔を張ったり、また逆に古びた感じを出すため塗料をこすりとったり、虫食い跡をわざとつけたり、さらには額縁の上にまで絵が描いてあったり、と、あらんかぎりの想像力を駆使して額縁は作られているようです。
それに比して、古来よりの日本画は掛け軸のかたちで鑑賞されることが多く、そのためにまた掛け軸は掛け軸で、表装や風帯(上部から垂れている二本の帯)にこだわりがあります。

今回は、特に額装の作品について、そのフレーム(額)とマットについて考えてみましょう。
フレームとは、文字通りその額の部分、マットとは額の内側にある紙や布の台紙のことを指します。版画作品の場合はこのマットを広めにとり、油彩作品の場合などにはせまく、あるいはマットなしの額装にすることもあります。

額縁に関しては、イタリア製のものに定評があり、これはもともと歴史と伝統をふまえていて、現在も多くの額職人が手彫りで額を作っています。 日本は、それに比べると職人の数も少なく、またそれだけの需要もないため、安価な額縁を流れ作業で作ることが多いようです。それゆえ、あまり高価でない版画などには、いかにもチープな感じの額がついていることが多いのでしょう。

私は、もちろん絵を見て歩くのも好きなのですが、それと同じくらい額を見るのも好きで、その結果、額に対して要求するものが非常に大きくなってしまいました。版画作品を購入するときには、たいてい額なしのシートのみで購入し、あとから知り合いの額屋さんと相談して、好きな額をつけます。油彩作品で、どうしても額付でないと売ってくれない場合には、仕方がないので買った後に額をはずして、より気に入ったものに付け直したりします。
そこまでしなくても・・・と思われる方も多いでしょうが、わたしにとっては、作品の内容と同じくらい額装も重要なので、どうしてもそうなってしまうのです。

「馬子にも衣装、髪かたち」ということばがありますが、作品を顔だと考えると、額は髪型のようなものだと思います。顔が美しいことも重要ですが、髪型がその顔にぴったり似合っていないと、顔のよさを損なってしまうこともあるでしょう。また、飾るお部屋の雰囲気と額の感じが調和していることも大切ですね。

オーダーメイドで額装をしてもらう場合、額屋さんのサンプルと作品を見合わせながらまず額縁の種類を決めます。これは、価格もピンキリなので、できれば額装したい作品を持参して、お店の専門の方と相談しながら決めるのがベターだと思います。
そのあとに、マットの種類と色、幅などを決めます。この、マットが意外と重要で、マットは額縁よりさらに内側で作品に密着しますから、ここで失敗するとせっかくの額縁がだいなし、ということにもなりかねません。マットのサンプルを作品の縁にあてながら、色や素材を決めてゆくとよいでしょう。 マットは紙のものが普通ですが、油彩作品や、ちょっと高級感のある版画などには絹目や麻のものをお薦めします。色も、作品がたとえばモノクロでちょっとさびしかったりしたら、うすいピンクやブルーなどで冒険してみるのもおもしろいと思います。その際、作品だけでなく、額縁とも調和が取れるものにすることが肝心です。幅も、作品が小さめだったらマットをちょっと大きく取ってみると、立派に見えたりします。

最近はインテリアがよりシンプルに、ラインもストレートな感じになってきているようですから、そういった流行にあわせてスウェーデン製などの北欧製の額縁の需要も増えてきました。ほとんど凹凸のない、スクエアやかまぼこ型で、色目もつや消しの銀やベージュなどです。これらは、幾何学調の抽象画などには大変よく合います。

ご自宅に飾っている作品が、ちょっと飽きてしまった、という時には、思い切って額装を変えてみるのはいかがでしょう?髪型を変えてイメチェンした女性のように、その美しさを再認識することうけあいです。


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